心という見えない場所を、のぞいてみませんか(第5話/全6話)

《これまでのお話》

→第1話 「誰かの、役に立ちたい」方々ばかり

→第2話 人には与えられた使命というものが

→第3話 「見える」苦しみ

→第4話 愛の、ものがたり。

「例えば、ですが。

もし、3日後にこの世を旅立つとしたら、何かやり残したことはありますか?」

 

唐突な質問に、心がどぎまぎとした。

3日後…どうなのだろうか。

 

「何でしょうか…やはり、自分の大切な方、愛する人に、感謝を伝え足りない、と感じるような気がします。そして、いろんな方にお会いしておきたいと感じるような気がします」

 

考えるよりも、なんとなくそう答えていた。

 

「では、そのまた3日後にこの世に降り立つことができる!とするならば。

同じように『感謝を伝えたい!』、『いろんな方に会ってみたい!』と、思いますか?」

 

どうだろうか。

視線を天井に向けて、考えてみた。

室内は、しんとして静かだった。

 

「そうですね、3日後にまた降り立つとしても。

『伝えたい。お会いしたい』、そう感じる気がします」

 

私は、答えていた。

濱﨑さんは、頷きながら、それを聞いていた。

 

「ありがとうございます。そうやって、何度も魂は旅をしてきたんです。

 ただ、生まれる時、記憶は魂の深いところに大切に包まれるようですが。

 私というものは私であって、私でないと感じられることこそ、命を知る分水嶺だと私は感じます。

 私は、たまたま、そこを観ることが役割として与えられたのだと、そのように理解しております」

 

私であって、私でないもの。そんな存在が、私の中にある。

不思議なようにも感じるが、それがおかしいとも思わなかった。

 

「なるほど、私であって、私でないもの。そこを観るのが、濱﨑さんのしていること。

『ここに来ると、なんだかわからないけれど落ち着く、癒される』というご感想がある理由が、少しだけ分かった気がします」

 

濱﨑さんは、ゆっくりと頷いた。

 

「カウンセリングも、セラピーも、お悩み相談という入口です。その方のお悩みや苦悩をお伺いし、その方の人生の軌跡を聞かせていただきます。それらは、多くは過去におこった心と体の痛みに起因します。

 

ご相談者様とともに歩幅を合わせて、心の深いところに潜っていきます。暗い海の底に素潜りすると想像なさってみてくださいね。ロープをたぐりながら進んでいきます。そのロープが相談者様の記憶です。

ですが記憶というものは、時にとても不透明なものでもあります。記憶だけでは、悩みや痛みの原因となっている所にたどり着けないことも少なくありません。ロープの歪みや、傷などで傷んでいたり、なにかの障害物に行く手を阻まれているかもしれません。

 

そんなときは、レイキを使うこともあります。

レイキとは、一言で表すと『愛と調和と癒やしのエネルギー』と言われています。

具体的には、リラックスの体制をとってもらいそっと体に手を触れるという行為です。

場合によっては、手は触れなくても対面で座っていても可能です。

 

霊視にしろ、カウンセリングにしろ。

私の思考からの言葉ではなくその方の癒やしに繋がる言葉をお伝えできるようになったのは、レイキの力のおかげであることが大きいですね」

 

見えないもの。心、魂。

カウンセリングやセラピー、あるいはレイキ。

どれにしても、結局のところ、流れ出ている源泉は同じように感じた。

それは、濱﨑さんの持っている、人を癒したい、人の役に立ちたい、という愛なのかもしれない。