「とはいえ、その体質スイッチは入っているので、いろんな場面で、視えない想いが流れ込んでくる。同時に、風景やシーンをみせられるようになりました。
とある、講演会の時でした。
お若い時に事故で体が不自由になり、同乗の友人はなくなってしまって、深い悲しみとととに自分を責め友人に謝り続けている。その方は、大きなハンデを持ちながらも自立し、一人暮らしと社会復帰についてのお話をしてくれました。
講演会の中で、友人への謝罪の言葉がでるたびに
『もう、謝らないで…お願い、自分を責めないで…あなたが悪いわけじゃない…』
『私の声は届かない…お願い、伝えてほしい…』
もどかしい悲痛な意識が、私の右側に強く訴えてきました。
ですが、見ず知らずの私が突然そんなことをいうのは…それに、神様と二度としません!と、約束したし…
自分の中の葛藤が生まれました瞬間でした」
見えるもの、感じるものを伝えてはいけない。
それが、どれくらい辛いことなのだろうと、私は想いをめぐらせていた。
「数年後、ある方と車で外に出たときです。
その方のご主人は他界されておられました。
詳細はなにも知らなかったのですが、私の右側でそのご主人が、『どうしても、どうしても伝えてほしい!!!!!!』と懇願するのです。
しばらく無視をしていましたが、その鬼気迫る懇願と悲壮な面持ちに、私は根負けしました。
私は、フロントガラスから見える空に、こう宣言しました。
『神様、約束をやぶります。どんな罰でも受け入れます。命が縮まってもかまいません。もう二度と会えなくなってもかまいません。この方の声を伝えてさせてください』
そして、助手席にいたその方に、こう伝えました。
『あのね、突然ごめんね、びっくりすると思うけど、気持ち悪いと思うとおもうけど、私のことはどう思ってもよいから…言うね。今、ここに、ご主人さんがきてる」
その方は驚きながらも、ご主人との対話を希望されました。
不思議な時空の中で、生前伝えきれなかったお互いの想いを吐露する中で、ごめんね、ありがとう、本当に愛していた、と繰り返される会話が終わったあと、彼女の潤んだ瞳と笑顔が、それぞれの心の塊をとかしたことを教えてくれました。
そのことが、見えない世界のことをお伝えするきっかけでした」
愛の、ものがたり。
そんな言葉が、聞いている私の脳裏に浮かんだ。
「見えないもの。そして、それを感じる力。
過信と猛省。そして、その身を挺してまで、誰かのためにそれを伝えようとされたこと。
お聞かせくださり、ありがとうございます」
濱﨑さんは少し気恥ずかしげに微笑む。
部屋の中に、穏やかな空気が満ちた気がした。
静かに、濱﨑さんは言葉を紡いだ。
「別れというものは、苦しみ、悲しみ、寂しさ…言葉では表すことはできないものです。
それは、逝く方も残る方も、同じであるかもしれません。
故人の魂が、魂のふるさとに帰るとき、ふしぎと、どちらの心も軽くなるんです。
軽くないとあがれないのではないかと、私は感じております。
肉体を離れるだけで、心、あるいは魂は、そのままなんです。
感情もしかり。よく『魂が、抜けたような』と表現されます。
心は抜け殻とも表現されるように、肉体という入れ物に心という場所があり、そこに肉体の期限まで宿っている。
私は、そう感じるようになりました。
心、感情というのは、次元を問わずに、伝わるものだと私は確信しています」
濱﨑さんの温かな視線が、こちらに向けられていた。