心という見えない場所を、のぞいてみませんか(最終話/全6話)

《これまでのお話》

→第1話 「誰かの、役に立ちたい」方々ばかり

→第2話 人には与えられた使命というものが

→第3話 「見える」苦しみ

→第4話 愛の、ものがたり。

→第5話 3日後にこの世を旅立つとしたら

「最初に、この『ひだまり処 禅』を訪れる方は、人の役に立ちたい、という方ばかりだと伺いました。それはやはり、濱﨑さんご自身がそうだからだと感じます」

 

濱﨑さんは、恥ずかしそうに笑った。

温かな空気が、部屋を満たしたようだった。

 

 

「カウンセリング、魂セラピー、過去世セラピー、そしてレイキ。

この『ひだまり処 禅』でご提供されていることは、その方の持っておられる花を、美しく咲かせることをサポートされておられる場所なのですね。

『使命の種が発芽しやすい環境を整える』と最初に伺いましたが、まさにその通りだと感じます。

そして私自身は、見えない世界や第六感といったものに疎いと思っていましたが、少し見方が変わりましたし、すでに見ているのかもしれない、とも感じました。

 

最後に似たような質問になるかもしれないのですが、濱﨑さんにとって、この『ひだまり処 禅』とは、どんな場所なのでしょうか?」

 

濱﨑さんは少し首をひねり、天井の方を見上げた。

 

「温かい、癒しの空間…でしょうか。

そうですね…雪国のカマクラのようなもの、というとわかりやすいでしょうか?

 

冷たいところから、ほっとするぬくもりの場所。

その中で心と身体を温める、湯治の温泉があるような。

そんな場所ではないかと思っています。

 

見える世界で、心が疲れてしまったとき。

心という見えない場所を、のぞいてみませんか?

そこには、ひだまりのような温もりが、あなたを待っているようです。

そんなことを想いながら、いつもこの場所を温めているんですよ」

 

心と身体を温める、癒しの空間。

まさにいま、そんな温かな空気が満ちているのを感じた。

そのやわらかな空気のなかで、濱﨑さんは微笑んでいた。

 

この微笑みに、この空気に触れたくて。

この場所に、多くの方が訪れているのだろう。

 

『ひだまり処 禅』。

そこは、見えない世界に触れ、使命という美しい花を咲かせる場所だった。

そして、ひだまりのようにあたたかな、濱﨑かほりさんがいる場所だった。

この場所を訪れる方は、きっとそのあたたかさに触れ、使命という花を咲かせていく。

 

濱﨑さんは、変わらず微笑んでいる。

[終わり]

最後までお読みいただき、ありがとうございました。